title02.jpg

ぶらりごろりぱくり

人が未明と呼ぶような時間に起きて机に座っていると、
大抵の場合はパソコンの電源ユニットで回っている排気ファンと、
側らで寝ているネコの寝息かイビキくらいしか聴こえない。

20160607_026.jpg

灯りをつけて、お湯を沸かして、コーヒーをいれて、
ほとんど無音と言っていいような静けさに感謝したりする。
さっきから、どこかでホトトギスが鳴いている。
ホトトギスは夜目が効くんだろうか?
こんな時間に鳴くのは梟か仏法僧ぐらいのものなんじゃないか?

ホトトギスの声は不思議なことに、いつも遠くから聴こえる。
家の中にいても、散歩で歩いている時も、近くで聴こえることはない。
どこか遥か遠く、天の高みから聴こえてくる気がする。
声のする方に歩いて行っても、僕が歩いた分だけホトトギスは遠ざかる。
けれどそれ以上には離れず、そしてそれ以上には近づけない。

僕が小さな頃、家の本棚に世界の名作図書館という子供向けの全集が並んでいて、
全部で50巻以上はあったと思うが、その中に自分の影を追いかける烏の話があった。
追いかけても追いかけても追いつけない自分の影を追い続け、
やがてカラスは疲れ切って死んでしまうという話だったと思う。
僕は子供心に、なんの教訓もない無残で悲しい話だなあと思った記憶がある。

あれから半世紀近くが経った今、
人にはどんなに追いかけても追いつかないものがある事を僕は知っている。
そんなことはない、お前の努力が足りないだけだと言うなかれ。
どんなに努力をしても僕が子供に戻ることは出来ないしネコになることも出来ない。
人が抱く夢とは、宇宙飛行士になったりノーベル賞を獲る事だけではないのだ。

ホトトギスの声はいつも遠くから聴こえる。




SKIN:Babyish-