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ぶらりごろりぱくり

昼は冷やしたぬき蕎麦だけだったから腹減っちゃったよ。
だから風呂上りにホットケーキを焼いた。
薄暗い台所に長女がやって来て座っている。

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耳かき一杯分ほどのバターが舐めたくてじっと座っている。
獣医の先生は人間の食べるものをあげるなと言う。
特に、新しく開業した人の好い先生は食べ物にこだわる。
うちも以前は人間の食うものは一切与えなかった。
でもこの頃その信念が少し揺らいでいる。

僕たちだって生きる上でなんら必要のないケーキを食す。
甘いケーキは腹ではなく心を満たすためのものだ。
だから僕は、腹を満たすものしか食わない人間を軽蔑している。
そういう人の心の貧しさを嫌悪している。
ネコたちに心の豊かさがあるか否かは分からん。

けれど耳かき一杯分のバターを舐めた長女がそれを美味しいと思い、
どこかへ出かけても耳かき一杯分のバターの為に帰って来てくれるならそれでいい。
いつか彼女がこの世から去った時、
僕はホットケーキを焼く度にバターナイフの先に付いた
耳かき一杯分のバターを見て、
誰よりもうるさくて誰よりも人懐こかったこの子を思い出すだろう。

John Williams - Cavatina




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