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ぶらりごろりぱくり

今時珍しいバタークリームのケーキ。名前はコーヒーロール。

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この昭和半ばで時が止まったようなケーキ屋はここいらで僕の一番のお気に入り。
いつもこのコーヒーロールを買おうとすると、お爺ちゃんになりかけのおっちゃんが、
「お客さん、これバタークリームですけどよろしいですか?」と尋ねる。
僕はニッコリ笑って「はい、イイです」と答える。

あのおっちゃんは何故「これバタークリームですけどよろしいですか?」と尋ねるのだろう?
それは多分バタークリームなんて嫌だよいう客がいるからとしか思えない。
そしてもちろん、今時バタークリームを好んで食うような人間が多いとも思えない。
それなのにおっちゃんはバタークリームのコーヒーロールを作り続けている。
そしてそれを買おうとする人に「これバタークリームですけどよろしいですか?」と尋ねている。
僕はそのおっちゃんのコワダリというか、意地というか、もっと偉そうな言葉でいえば美学
みたいなものに魅かれてしまう。
そして一個食い終わるとオエッとなる量の破壊力も珠玉の如き魅力だったりする。

ちなみに「伊豆高原 ケーキ」という言葉でググると一番最初に出てくるケーキ屋のケーキは、
僕にとっては毒にも薬にもならないケーキでしかない。
あんなものを食うぐらいなら何も食わない方がマシというぐらい魅力の感じられないものだ。
僕は昔から店主が死んだり倒れたりしたらその味ともお別れみたいな店を愛し続けてきた。
創作というのは本来そういうものだと思う。
どんなに毒であろうと、どんなに薬であろうと、店主の意思と技術を継いで二代目や奥方が
店を続けるなんてのはナンセンス以外の何物でもないと思う。

あなたはジョン・レノンの倅にジョン・レノンを求めて満足するか?
あなたはオノ・ヨーコにジョン・レノンを求めて満足するか?
現役一代。
それが創作者のあるべき姿に違いない。
あのおっちゃんが天に召される時、コーヒーロールも僕の記憶にしか存在しなくなる。

コーヒーロールを食った今夜は少し胸焼けな雨の夜。




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