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ぶらりごろりぱくり

昼頃から少しずつ雨が強くなり始めて台風がやって来る。
くつしたはどこかの空家に潜り込んで、じっと夜が過ぎるのを待っているだろう。
うちの裏には細い坂道があって、昨夜くつしたはそこを駆け上がって行った。
あいつが生まれた山にも、あいつが暮らした国東の家にも坂道があって、
くつしたは毎日その坂道を登ったり降りたりしていた。
だから細い坂道を登れば、今までの家に帰れると思ったんだろか?

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ネコは家の中で暮らす方が幸せだと、まるでネコの代弁者の如く話す人がいる。
そんな事があるものか、と僕は思う。
車も人もロクに通らない山の中へネコたちを放してみるといい。
彼らは家の中で走り回らず、爪を研がず、トイレを使う事もない。
彼らは目先の快楽を本能的に見分ける天才だ。
その彼らが外で遊び家で寝るのなら快楽は外にあり安寧は家にある。

あの山を降りたのは人間の都合で、ネコたちにとっては不本意極まりなかったろう。
なぜあの山を降りなければならなかったのかを話したくても言葉が通じない。
たとえ言葉が通じたとしても、彼らはそんな理由を聞きたくはないだろう。
哀しい哉人間は日々妥協を重ねて均衡を保とうとする。
良い人間である為には多くの事を我慢し続けなければならない。
そんな訳の分からない理屈を、どうやってネコたちへ説明するのか。
どうやってくつしたに分かってもらうのか。

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なあ、くつした。
その坂道を登ってもあの山には辿り着かないんだ。
お前は船と車に乗って千キロ離れた土地に来たんだ。
今夜は腹ペコに耐えながらどこかで雨宿りして、
明日台風が去ったら帰って来いよ。




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