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ぶらりごろりぱくり

東京から九州の山の中へやって来て一年が過ぎて、
飛行機雲を見上げながら「どうしてオレはここにいるんだろうなあ?」と、
時々思い出したように考えることが今もある。
ここの暮らしが耐え難いほどに苦痛な訳でもないけれど、
じゃあ心底楽しいか? と尋ねられても僕には肯けないだろう。

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それはどこか、或る日突然望んだ訳でもなく家の中に隔離されたネコに似ている。
窓の外には昨日まで遊んでいた景色があるのに出て行けない。
食事にも寝床にも事欠かないし、
同居のネコがいたとしても迷惑をかけられたり苛められたりするでもない。
今はまだ、なんとか窓と網戸を開けて逃げ出そうと身悶えしている彼らも、
いつかは諦めてしまうのかな?
好きに駆け巡っていた土や草の感触も忘れて、
フリースとアクリル毛布の肌触りが当たり前になってしまうんだろうか?
そうして僕もいつかは故郷である東京を忘れちゃうんかな?

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ネコの世界には住む場所が変わったからといって理解不能な風習や価値観は無い。
そこに暮らす上で本当はなんの必要も無い煩わしい人付き合いや会費も無い。
店が無いとか、品数が少ないとか、ネットが遅いとか、サービスが悪いとかも関係ない。
彼らの世界は至極単純で、そして理に適っていると僕は思う。
自分の生活が侵されない限り周りはどうでもいい。
ただそれだけ。
だから彼らは必要以上の物欲を持たず必要以上の快楽も欲しない。
ガラガラに空いたキャンプ場で、わざわざ人のテントに並べて幕営し、
「これも何かの縁ですから」と理解不能な付き合いを強いるバカバカしさなどネコにはない。
だから僕はやっぱり、次に生まれてくるときはネコでいい。




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